物語 「pola meets lyrica」


トンネルを抜けると何があるの?
昔の小説家は、トンネルの先は雪国だと言った。
でも、今は8月。雪なんて期待できるわけがない。
トンネルの向こうは……何?
そんなことを考えるとき、可能性は想像力と同じだけある。
行ってみよう。
私の想像力と可能性、どっちが勝つか確かめに。

鳥のさえずり。
木々の隙間からかすかに差し込む光。
ふみしめる土の感触。
見渡す限りの深い森だった。
私の全然知らない場所。
ここにはきっと、不思議なものがあると思う。


一人の少女がいた。
名前はリリカ。歌が上手。
世界の果てにいるであろう女の子のことを想って、いつだって歌っている。
リリカは尋ねた。「あなたは世界の果てからやって来たの?」
私は首を振った。「私はポーラ。ここが世界の果てじゃないの?」
そして、私とリリカはお互いに微笑んだ。


廃墟には人の気配がなかった。
まるで、世界の始まりの日から廃墟として存在していたようだった。
水と森に浸食された場所、それがリリカの世界。
リリカはいつもそこで歌を歌う。
今日は私のために歌ってくれた。
私もリリカに声を合わせた。


ここは楽園?
まるで時間が止まったかのように、いつまでも楽しい時が刻まれる。
「歌いましょう」とリリカが言えば、
「踊りましょう」と私が返す。


廃墟に自分の名前を刻む。
Pola
Lyrica
文字は直ぐに風化した。
笑い声はどこまでも、こだました。


足元には自分だけの水。
私とリリカしかいない世界では、いつでも「自分」が頭にまとわりつく。
抜けられない。自分から抜けられない。
そんな時は想像の海で溺れよう。


「あなたは私。私はあなた」
「未来も世界も時間も関係ない。私たちは私たちだけ」
まどろみながらの、軽いキス。


水は流れる。
風はそよぐ。
草木は生まれ変わり、
私たちは眠り続ける。


あなたも一緒に夢の中で遊びましょう?